本論文では,並列処理システム上でFORTRANプログラムを高速に実行する方式 として,多段の条件分岐に渡る先行評価を用いたプログラムの並列化と実行方式 を提案する.従来,条件分岐を含むプログラムを並列化する手法がいくつか提案 されている.先行評価を用いない手法としては,(1)タスクの最早実行条件求出 法があり,先行評価を用いる手法としては,(2)スーパスカラプロセッサやVLIW 計算機を対象とした条件分岐1段に限った先行評価方式,及び,(3)特定のルー プを対象とした多段の先行評価方式,が提案されている.しかし,(1)最早実行 条件を求めるのみでは十分な並列性が得られない,(2)1段の条件分岐の先行評 価で得られる速度向上は高々2倍である,(3)適用対象が特定ループに限られる, という問題を持つ.これらの問題に対して,本論文では,プログラムをマクロタ スクに分割し,マクロタスク間の多段の先行評価方式を一般的な並列処理システ ム上で定義する.そして,各々のマクロタスクについて,実行開始条件・制御確 定条件・実行停止条件を用いたマクロタスクの実行制御手法を提案する. Keywords: 並列処理,先行評価,投機的実行,コンパイラ,マルチプロセッサ