並列計算機EM-4におけるマクロタスク間投機的実行の分散制御方式  本論文では,マクロタスクと呼ぶタスクレベルでの投機的実行を並列計算機上 で行うマクロタスク間投機的実行の効果的な制御手法として分散制御方式を提案 する.一般に,投機的実行における理想的なモデル(Oracle Model)を仮定する と,投機的実行を行わない場合に比較して12〜630倍の速度向上が得られる.しか し,実際には,投機的実行時に発生する制御オーバヘッドのために,上記の理論 性能に近づくのは難しく,制御オーバヘッドの小さい制御手法が必要とされる. 本論文で提案する分散制御方式は,各マクロタスクが(1)自分の後続のマクロ タスクを動的に生成すると共に,(2)システム全体に放送される制御情報を随 時監視し各マクロタスク自身が次の状態を決定することにより実現される.これ により,マクロタスクの制御を並列化できると共に,マクロタスク制御オーバヘ ッドがマクロタスク数に依存しなくなり,高速な投機的実行が可能となる.本方 式を並列計算機EM-4上にインプリメントし,Boolean Recurrenceループを用いて 評価した結果,従来提案されている一般的なタスク制御方式である集中制御方式 を用いた場合に比較し,マクロタスク制御オーバヘッドを小さくできることを確 認した.